相続

2026-10-28

遺産分割の前でも親の預金を引き出せる「払戻し制度」|口座ごとに残高×3分の1×法定相続分、同じ銀行で150万円まで(法務省の情報で解説)

親が亡くなると、銀行は口座の取引を止めます。預金は相続人全員のものになるので、ふつうは遺産分割の話し合いがまとまるまで、自由には引き出せません。でも、葬儀の費用や、残された家族の生活費など、すぐにお金が必要になることもあります。

そこで、2019年(令和元年)7月1日から、遺産分割の前でも一定の額までは預金を引き出せる「預貯金の払戻し制度」ができました。この記事は、法務省の公式ページをもとに書いています(出典は記事の最後に載せています)。

※ 金融機関ごとに必要な書類や手続きがちがいます。手続きの前に、口座のある金融機関に確認してください。

2つのしくみ

① 家庭裁判所を通さない払戻し ② 家庭裁判所の仮分割の仮処分
どこで 金融機関の窓口 家庭裁判所
いくらまで 計算式の額(同じ金融機関で150万円まで) 家庭裁判所が認めた額
条件 ほかの相続人の同意はいらない 遺産分割の調停や審判を申し立てていること など

① 金融機関で、一人で引き出せる額

法務省によると、それぞれの相続人は、口座ごとに次の計算式で求めた額まで、ほかの相続人の同意がなくても、単独で払戻しを受けられます。

単独で払戻しを受けられる額
式
相続開始時の預金額 × 3分の1 × その人の法定相続分
ただし、同じ金融機関からは150万円が上限

計算の例

相続人が母と子2人で、父の口座に亡くなった時点で600万円あった場合、子1人の法定相続分は4分の1です。

  • 子1人が引き出せる額:600万円 × 3分の1 × 4分の1 = 50万円
  • 母が引き出せる額:600万円 × 3分の1 × 2分の1 = 100万円

同じ銀行に口座がいくつあっても、その銀行から引き出せるのは合わせて150万円までです。

法定相続分の考え方は、遺留分とは?の「法定相続分(おさらい)」でも紹介しています。

② 家庭裁判所の仮分割の仮処分

150万円をこえるお金が必要なときなどは、家庭裁判所の手続きもあります。

  • 遺産分割の調停や審判を申し立てていることが前提です
  • 相続した借金の返済、相続人の生活費などのために、預金を使う必要があると家庭裁判所が認めた場合
  • ほかの相続人の利益を害さない範囲で、特定の預金の全部または一部を、仮に取得させてもらえます

引き出したお金はどう扱われる?

民法では、払戻しを受けた預金は、その相続人が遺産の一部の分割によって取得したものとみなされます(民法909条の2)。あとの遺産分割では、その分を受け取ったものとして扱われるので、「もらい得」になるわけではない点に注意しましょう。

気をつけたいこと

  • 相続放棄を考えているときは、預金を引き出して使うと、相続を認めた(単純承認)とみなされるおそれがあります。先に相続放棄の期限と手続きを確認し、迷うときは専門家に相談してください
  • 払戻しに必要な書類は、金融機関ごとにちがいます。手続きの前に、口座のある金融機関に確認しましょう
  • 葬儀費用は、相続税の計算で遺産から差し引けるものもあります。相続税で葬式費用は引ける?

口座が止まったときの全体の流れは親の口座が凍結されたらにまとめています。

まとめ

  • 2019年7月1日から、遺産分割の前でも預金を引き出せる払戻し制度ができた
  • 一人で引き出せるのは、口座ごとに相続開始時の残高×3分の1×法定相続分まで。同じ金融機関では150万円が上限
  • それ以上が必要なときは、遺産分割の調停・審判を申し立てたうえで、家庭裁判所の仮分割の仮処分を使える
  • 引き出した分は、あとの遺産分割で調整される。相続放棄を考えているときは注意

出典

(2026年10月28日に確認)

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