2026-10-28
配偶者居住権とは?|父が亡くなっても母が自宅に住み続けられるしくみ。短期居住権は最低6か月、配偶者居住権は登記が大切(法務省・政府広報の情報で解説)

父が亡くなり、遺産は自宅と少しの預貯金だけ。母が自宅を相続すると、預貯金はほとんど子どもたちに回り、母の生活費が足りなくなる――。こうした心配に応えるために、2020年(令和2年)4月1日から「配偶者居住権」というしくみができました。
この記事は、法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」と、政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本」(法務省取材協力)をもとに書いています(出典は記事の最後に載せています)。
※ 配偶者居住権を設定するかどうかは、家族の状況や財産の内容で変わります。具体的には、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談してください。
2つの居住権のちがい
| 配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 | |
|---|---|---|
| どうやって得る? | 遺言(遺贈)や遺産分割などで取得 | 亡くなった時に、その家に無償で住んでいたことなどで発生 |
| いつまで? | 遺言や遺産分割で決めた期間。決めなければ配偶者が亡くなるまで | 相続開始などから6か月(遺産分割が長引けば、決まるまで) |
| 登記 | できる | できない |
| 家賃 | かからない | かからない |
配偶者居住権のしくみ
配偶者居住権は、亡くなった人が持っていた建物(夫婦の共有の建物も含む)に住んでいた配偶者が、家賃を払わずに住み続けられる権利です。
- 取得の方法:亡くなった人の遺言、または相続人同士の話し合い(遺産分割協議)などで取得します。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の審判で取得できる場合もあります
- 期間:特に決めなければ、配偶者が亡くなるまで住み続けられます。配偶者が亡くなると、権利は消えます
- できないこと:権利をほかの人に売ったり、所有者に無断で家を人に貸したりすることはできません
住まいと生活資金を両方確保しやすくなる
配偶者居住権は、売ったり貸したりできない分、建物の所有権を取得するより低い価額で住まいを確保できます。そのため、預貯金などのほかの遺産を受け取りやすくなります。
遺産分割で取得する場合は、配偶者居住権の財産としての価値の評価が必要になります(話し合いの内容によっては、評価がいらない場合もあります)。
登記はできるだけ早く
配偶者居住権は、登記することで、第三者(たとえば、その建物を買った人)にも権利を主張できます。権利を主張できるかは登記の先後で決まるため、法務省は、取得したらできるだけ早く、建物の所在地を管轄する法務局で登記の手続きをするよう案内しています。
修繕や固定資産税は?
法務省のQ&Aでは、次のように説明されています。
- 修繕:配偶者が行います。配偶者が相当の期間内に修繕しないときは、所有者が修繕できます
- 増改築:所有者の承諾が必要です
- 固定資産税:納税するのは所有者ですが、ふつうの必要費として、所有者は配偶者に請求できます
配偶者短期居住権:すぐに出ていかなくてよい
配偶者短期居住権は、亡くなった人の建物に住んでいた配偶者が、一定の期間、無償で住み続けられる権利です。亡くなった人の意思に関係なく、次の期間は住み続けられます。
- 遺産分割をする場合:建物を誰が相続するか決まるまで。早く決まっても、亡くなってから最低6か月
- 建物がほかの人に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄した場合:建物を取得した人から「消滅の申入れ」を受けた日から6か月
短期居住権は登記できないので、建物が第三者に売られると、その人には主張できません。
気をつけたいこと
- 2020年4月1日より前に書かれた遺言では、配偶者居住権を設定できません
- 配偶者居住権は売ったり貸したりできない権利です。子どもが将来その家をどうするかも含めて、家族で話しておくと安心です
- 婚姻期間が20年以上の夫婦で、住まいを生前贈与や遺贈した場合は、原則として遺産分割のときに「先渡し」とみなされないしくみもあります
相続全体の流れは相続の流れと期限、相続した家の登記は相続登記の義務化、遺言の最低限の取り分は遺留分とは?をご覧ください。
まとめ
- 配偶者居住権は、遺言や遺産分割で取得し、決めなければ配偶者が亡くなるまで家賃なしで住める(2020年4月1日から)
- 所有権より低い価額で住まいを確保でき、預貯金など生活資金も受け取りやすくなる
- 第三者に主張するには登記が必要。取得したら早めに法務局で手続きを
- 配偶者短期居住権は、亡くなってから最低6か月は無償で住み続けられる(登記はできない)
出典
- 法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」
- 政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】」(2026年3月2日、取材協力:法務省)
(2026年10月28日に確認)


