高齢者施設

2026-10-08

有料老人ホームの入居一時金(前払金)は返ってくる?入居3か月以内の解約ルールと保全措置を法律で解説

「入居一時金に何百万円も払ったのに、もし親がすぐに亡くなったら、お金はどうなるの?」

有料老人ホームの中には、入居するときに家賃などの一部をまとめて払う「入居一時金(前払金)」が必要なところがあります。大きなお金なので、返ってくる場合のルールを知っておくことが大切です。

この記事は、老人福祉法と老人福祉法施行規則の条文(厚生労働省の資料に収録)をもとに書いています(出典は記事の最後に載せています)。

そもそも「前払金」とは

老人福祉法では、有料老人ホームが、終身にわたって受け取るべき家賃などの全部または一部を、前もってまとめて受け取るものを「前払金」としています。いわゆる「入居一時金」のことです。

前払金を受け取るホームには、法律で次のことが義務づけられています。

前払金を受け取るホームの義務(老人福祉法第29条)
算定の基礎を明示
前払金がどういう計算で決まっているかを、書面で示さなければならない。
保全措置
前払金を返さなければならなくなったときに備えて、銀行の保証などの保全措置を講じなければならない。
返還の契約
一定の期間内に契約が終わったときは、決められた方法で計算した額を返す契約を結ばなければならない。

入居から3か月以内なら、ほぼ全額が戻る(いわゆる「90日ルール」)

老人福祉法施行規則では、入居後3か月が経過するまでの間に、契約を解除した場合、または入居者が亡くなって契約が終わった場合の返還方法が決められています。

返ってくるのは、前払金から、実際に住んだ日数分の家賃などを差し引いた額です。差し引かれる額の計算方法は、次のとおりです。

家賃など(前払金の対象になっている費用)の月額 ÷ 30 × 入居した日から契約が終わった日までの日数

計算の例

たとえば、前払金が600万円で、前払金の対象になっている家賃などの月額にあたる額が15万円のホームに入居し、入居から40日目に契約が終わった場合(実際の計算はホームの契約書の定めによります)。

  • 差し引かれる額:15万円 ÷ 30 × 40日 = 20万円
  • 返ってくる額:600万円 − 20万円 = 580万円

このしくみは「短期解約特例」や「90日ルール」と呼ばれることがあります。体験入居ではなく、正式に入居したあとでも、3か月以内なら大部分が戻るということです。

※ 入居後3か月以内でも、前払金とは別に毎月払う管理費や食費、原状回復の費用などは、契約の内容によって別に精算されることがあります。

3か月をすぎたら?

3か月をすぎたあとでも、**ホームが前払金を計算するときに想定した入居期間(償却期間)**が終わるまでに契約が終わった場合は、その後の期間の家賃などを日割りで計算した額が、前払金から返されます(施行規則第21条)。

たとえば、想定した入居期間が5年のホームで、2年で退去した場合は、残りの3年分にあたる額が返還の対象になる、という考え方です。ただし、実際の返還額は、契約書に書かれた償却のしかた(入居時に償却される「初期償却」があるかなど)によって変わります。

「権利金」は受け取ってはいけない

老人福祉法では、有料老人ホームは、家賃、敷金、介護などのサービスの対価として受け取る費用以外に、権利金その他の金品を受け取ってはならないとされています。また、施行規則では、敷金は家賃の6か月分が上限とされています。

「入会金」「権利金」など、何の対価か分からないお金を求められたら、契約の前に必ず確認しましょう。

契約の前に確認したいこと

  • 重要事項説明書と契約書で、前払金の額、算定の基礎、想定している入居期間(償却期間)、初期償却の有無を確認する
  • 3か月以内に解約した場合の返還について、契約書にどう書かれているか確認する
  • 前払金の保全措置として、どんな方法(銀行の保証など)をとっているか確認する
  • 前払金がない(または少ない)月払い方式のプランがあれば、比べてみる

厚生労働省の資料では、保全措置を講じていないホームが一定数確認されていて、自治体に指導の徹底を求めています。保全措置をとっていないのは法律違反です。説明があいまいなときは、都道府県や市の担当窓口に相談することもできます。

まとめ

  • 前払金を受け取るホームには、算定の基礎の明示・保全措置・返還の契約が法律で義務づけられている
  • 入居から3か月以内の解約や死亡なら、日割りの家賃などを差し引いた額が返ってくる
  • 3か月をすぎても、想定した入居期間内なら、残りの期間分が返還の対象になる
  • 権利金は禁止、敷金は家賃の6か月分まで
  • 契約前に、償却のしかたと保全措置を必ず確認する

有料老人ホームとサ高住のちがいはサ高住と有料老人ホームの違いは?、施設の種類は介護施設の種類まとめもあわせてご覧ください。

※ この記事は2026年10月時点の法令の内容をもとにしています。実際の返還額は、ホームとの契約の内容によって異なります。くわしくは、契約前にホームに説明を求めるか、都道府県・市の有料老人ホームの担当窓口に確認してください。

この記事の出典

(2026年10月に内容を確認しています)

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