相続

2026-09-30

親が認知症になると実家が売れない?「資産凍結」の前に家族ができること

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「親が施設に入ることになったら、実家を売ってその費用にあてよう」

実家じまいを考えている方の多くが、このように考えています。ところが、親が認知症になって判断能力が低下すると、その実家を売れなくなることがあるのをご存じでしょうか。

実家だけではありません。親名義の銀行預金も、家族が自由に引き出すことは難しくなります。これが、いわゆる「資産凍結」と呼ばれる状態です。

この記事では、資産凍結がなぜ起こるのか、起きてしまったらどうなるのか、そして親が元気なうちに家族ができる備えについて、分かりやすくご案内します。

「資産凍結」とは?

法律では、売買などの契約は「本人の意思」にもとづいて行うものとされています。そのため、認知症などで判断能力が大きく低下すると、本人が契約をすることが難しくなります。

具体的には、次のようなことができなくなるおそれがあります。

  • 預金の引き出し・解約:銀行が本人の判断能力の低下を知ると、口座の取引が制限されることがあります
  • 実家(不動産)の売却:売買契約を結べないため、施設の費用にあてようと思っても売れません
  • 保険や証券の解約
  • 生前贈与などの相続対策

「子どもなんだから、代わりに手続きすればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、たとえ家族であっても、本人に代わって財産を動かすことは原則できません。最近は振り込め詐欺の対策もあって、銀行の窓口では本人確認や意思確認が厳しく行われています。

※ 銀行によっては、医療費や介護費など本人のために使うことがはっきりしている支払いに限り、家族からの引き出しに応じる場合もあります。ただし対応は銀行ごとに異なり、実家の売却のような大きな手続きには使えません。

他人事ではない、認知症の人の数

厚生労働省の研究班による推計では、2022年時点で65歳以上の認知症の方は約443万人。高齢者のおよそ8人に1人にあたります。軽度認知障害(MCI)の方も含めると、さらに多くなります。

「うちの親はまだしっかりしているから大丈夫」と思っていても、ある日突然、脳梗塞や転倒による入院がきっかけで判断能力が低下してしまうこともあります。

資産凍結になったら「成年後見制度」を使うことに

判断能力が低下したあとで財産を動かすには、多くの場合、「成年後見制度(法定後見)」を使うことになります。家庭裁判所が「後見人」を選び、その後見人が本人に代わって財産を管理する制度です。

本人を守るための大切な制度ですが、家族にとっては次のような負担もあります。

  • 後見人に家族が選ばれるとは限らない:実際には、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれるケースが多くなっています
  • 費用がかかり続ける:専門職が後見人になると、家庭裁判所が決める報酬がかかります(管理する財産の額などによって決まり、各家庭裁判所が「報酬のめやす」を公表しています)。原則として本人が亡くなるまで続きます
  • 原則、途中でやめられない:「実家を売り終わったから終わり」とはなりません
  • お金の使い道が制限される:本人の財産を守ることが目的のため、相続税対策や、家族のための支出などは基本的に認められません
  • 実家の売却には家庭裁判所の許可が必要:本人が住んでいた家を売るときは、家庭裁判所の許可を得る必要があります

「施設の費用のために実家を売りたい」という目的があっても、手続きに時間がかかり、家族の思うようには進まないことがあるのです。

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親が元気なうちにできる3つの備え

資産凍結への備えは、親の判断能力がしっかりしているうちにしかできません。代表的な方法は次の3つです。

任意後見 家族信託 遺言
どんな仕組み? 判断能力が低下したときに、財産管理をしてもらう人をあらかじめ決めておく 親の財産の管理を、子どもなどの家族に託す 亡くなったあとの財産の分け方を決めておく
効力が始まるとき 判断能力が低下したあと(家庭裁判所への申立てが必要) 契約したときから 亡くなったとき
認知症になったあとの実家の売却 可能(後見監督人がつき、報酬が発生) 託された家族の判断で可能 ✕(生前の対策にはならない)
費用のイメージ 公正証書の作成費用+監督人への報酬が続く 最初にまとまった費用+登記費用など 公正証書遺言なら数万円〜

任意後見

親が元気なうちに「将来、判断能力が落ちたらこの人に財産管理をお願いする」と契約しておく方法です。後見人を自分たちで決められるのが大きな安心材料です。

ただし、実際に効力が始まるときには家庭裁判所が「任意後見監督人」を選び、その報酬がかかり続けます。また、成年後見と同じく、積極的な資産の活用や相続税対策は難しいとされています。

家族信託

親(財産を託す人)が、信頼できる家族(財産を任される人)に、実家や預金などの管理・処分をする権限を託す仕組みです。財産から生まれる利益は、これまでどおり親が受け取ります。

たとえば、実家を家族信託しておけば、親が認知症になったあとでも、託された子どもが実家を売却して、そのお金を親の施設費用にあてることができます。家庭裁判所の関与もなく、家族の判断で進められるのが大きな特長です。

一方で、次のような注意点もあります。

  • 最初に、専門家への報酬や登記費用など、まとまった費用がかかる
  • 親本人の納得と、ほかの兄弟姉妹などの理解が欠かせない
  • 介護サービスや施設の入所契約といった「身の回りの手続き」を代わりに行う仕組みではない
  • 年金を受け取る権利など、託すことができない財産もある

遺言

遺言は「亡くなったあと」のための備えです。生きている間の資産凍結には効果がないため、ほかの対策と組み合わせて考えるのが一般的です。

こんなご家族は、早めの検討をおすすめします

次の項目に2つ以上あてはまる場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

  • 親が70代・80代になってきた
  • 最近、親の物忘れが気になる
  • 親がひとり暮らし、または離れて暮らしている
  • 将来、親が施設に入るときに実家を売るかもしれない
  • 実家以外にも、アパートや土地など親名義の不動産がある
  • 親の預金から介護費や生活費を払うことになりそう

特に**「実家を売って施設の費用にあてたい」**と考えているご家族は、資産凍結の影響をいちばん大きく受けます。どの方法が合うかはご家族の状況によって違うため、「まだ早いかな」と思う段階で相談しておくと安心です。

家族信託の相談先「おやとこ」について

家族信託は、契約書の作り方や登記、銀行での手続きなど、専門的な知識が必要です。相談先のひとつとして、家族信託の専門サービス「おやとこ」があります。

  • 相談料・着手金は0円。「うちは家族信託をしたほうがいいの?」という段階から相談できます
  • 家族信託ありきではなく、遺言や任意後見など、ほかの方法も含めてご家族に合う対策を一緒に考えてくれます
  • 大阪・京都にも支店があり、自宅への訪問、来社、オンラインでの相談に対応しています
  • 親御さんやご兄弟への説明に、専門家が同席してくれることもあります

費用の目安は、初期費用が23万1,000円(税込)〜、契約後の継続サポートが月額2,728円(税込)〜です(2026年9月時点。信託する財産の額などによって変わり、契約書作成や登記にかかる弁護士・司法書士の費用は別途必要です)。無料相談の中で見積もりを出してもらえます。

親の判断能力が低下してしまうと、家族信託は使えなくなります。「親がまだ元気な今」が、いちばん選択肢の多いタイミングです。

まとめ

  • 親が認知症になって判断能力が低下すると、預金の引き出しや実家の売却が難しくなる(資産凍結)
  • 資産凍結になると、成年後見制度を使うことになり、費用や手続きの負担がかかり続ける
  • 任意後見・家族信託などの備えは、親が元気なうちにしかできない
  • 「実家を売って施設の費用にあてたい」ご家族ほど、早めの相談がおすすめ

家族信託の仕組みや費用は家族信託とは?の記事、親の口座のことは口座凍結についての記事、「もう認知症かも」という方は家族信託は間に合う?の記事をご覧ください。

実家の売却の進め方は不動産売却のページ、相続の基本は相続のページ、施設選びは高齢者施設のページもあわせてご覧ください。

※ この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度や費用は変わることがあります。実際の手続きは、専門家にご確認ください。

この記事の出典

(いずれも2026年9月に内容を確認しています)

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